高血圧


Q1)血圧の高い家系で、血圧の事が気になりますが、血圧が高いとどんな病気になりやすいのでしょうか?  37才男性

(Q2)2,3年前までは血圧は低い方であったのに、最近血圧が高くなりました。それと平行して体温が上がったようです。病気でしょうか。 (70歳くらいの男性)

(Q3)人、特に知らない人などと会話をすると血圧が上がるようですが、どうすれば良いでしょうか?以前に脳出血の既往があります。

(Q4)血圧の薬を朝夕二回飲んでいますが、夕食後の薬は晩酌(ビール一本くらい)の後なので気になります。晩酌を止めるべきでしょうか? 構わないでしょうか?

(Q5)最近は成人病が話題になっていますが、女性には貧血や低血圧で悩む人が多いように思います。私もその一人ですが、血圧を上げる事は出来なくても、少しでもふらつかない元気の出る方法や食品などありましたら、教えて下さい。  K.K.

(Q6)高血圧の薬は飲み始めたら一生飲まなければならないと人が云いますが本当でしょうか?

(Q7)高血圧の人はアルコールを飲んでよいでしょうか?


(Q1)血圧の高い家系で、血圧の事が気になりますが、血圧が高いとどんな病気になりやすいのでしょうか?  37才男性

(A1)血圧の事から話しましょう。血圧と言うのは血管の中の圧のことです。心臓が大動脈内に血液を押し出した時の圧を最高血圧(または収縮期血圧)、心臓に血液が充満する時の圧を(心臓からの圧はかかりませんが、大動脈が収縮するので、ある程度の圧があります)最低血圧(または拡張期血圧)と呼びます。血圧は年令と伴に上昇するのが普通で、左図のように少しずつ上昇していきます。この訳は、年をとると伴に動脈硬化が起こるからです。動脈硬化というのは、動脈の壁が固く厚くなる現象で、血管内腔は狭くなり、血液の通りが悪くなります。血管壁が固くなると、心臓から血液が押し出された時に動脈が広がりきれず、血圧が上がるのです。拡張期には血管が収縮しきれないので収縮期血圧は低くなります。さて、高血圧と動脈硬化の関係ですが、動脈硬化は血圧を上昇させますし、高血圧は動脈硬化を進めます(悪循環です)。動脈硬化が進むと先ほど述べましたように、動脈の内腔が狭くなり、血流障害を起こしやすくなります。動脈は体のすべての部分にありますので、動脈硬化による障害は何処にでも起こりうる訳ですが、特に重要な臓器に起こると大変なことになります。頭では脳梗塞、心臓では狭心症や心筋梗塞、腎臓では腎硬化症による腎不全、目では網脈動脈閉塞症や眼底出血など数えても枚挙にいとまがありません。さて、質問に戻りますが、高血圧と関係ある病気は今述べました。37才で高血圧を気にすることは大変良いことです。というのはそろそろ血圧が上昇し、早い人では動脈硬化による病気が出始める頃なのですから。この時期から自分の血圧を知り、高い時はその治療をすることにより高血圧によるいろんな病気を予防できるのです。高血圧の治療については3月、4月、5月と連続3回に亘り勉強会で取り上げて来ましたが、ご希望があればまた行いますのでお申し出下さい。 それともう一つ、動脈硬化に関係するのは遺伝と年令と高血圧だけでなく、高脂血症、糖尿病などの病気や肥満という体型、更にはタバコやアルコールなどの嗜好も関係していますので、これらのことにも注意する必要があります。
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(Q2)2,3年前までは血圧は低い方であったのに、最近血圧が高くなりました。それと平行して体温が上がったようです。病気でしょうか。 (70歳くらいの男性)

(A2)高血圧には本態性高血圧(明らかな原因がない場合)と二次性高血圧(何らかの病気に伴って血圧が上がる場合)があります。ほとんどの高血圧は前者で、加齢により徐々に血圧が上がってくるものです。30才代後半から始まり、遺伝的要素があります。一方、二次性高血圧は比較的若い人から見られ、短期間に進行し、降圧剤が効きにくいという特徴があります。その原因には腎臓の病気や内分泌性疾患(クッシッング症候群、原発性アルドステロン症や褐色細胞腫)や動脈の病気(大動脈炎症候群)などがあります。この方のように70才くらいになって急に血圧が上がった場合、本態性高血圧は考えにくく、二次性高血圧を疑います。この中には体温が上がる病気もあります。それぞれの病気の特徴は説明が長くなり割愛しますが、必ず専門の先生の診察を受けて下さい。それともう一つ、忘れてならないのは、自律神経の一つ、交感神経が亢進した状態(体が緊張した状態)です。この時も一時的ですが血圧が上がり、体温も上がります。ストレスなどが多い時に起こります。 
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(Q3)人、特に知らない人などと会話をすると血圧が上がるようですが、どうすれば良いでしょうか?以前に脳出血の既往があります。

(A3) 血圧は前回の勉強会で話しましたが、いろんな状況ですぐに上がったり下がったりします。特に上がることが多いのですが、これには個人差があります。自律神経の調節が関与しているのですが、自律神経には精神的緊張が関与しています。ですから誰でも緊張すると血圧が上がるのです。さて、ご質問の方は、知らない人と話すと血圧が上がる様ですので、やや緊張型の性格のようですね。一番良いことは知らない人とは話さないことです。しかし現実にはこれは難しいことです。まあ余り意識しないで自然体でいきましょう。
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(Q4)血圧の薬を朝夕二回飲んでいますが、夕食後の薬は晩酌(ビール一本くらい)の後なので気になります。晩酌を止めるべきでしょうか? 構わないでしょうか?

(A4)うーん、いい質問ですね。お酒で薬を飲む人はいないでしょうが、薬を飲んだ後にお酒を飲んだり、お酒を飲んだ後に薬を飲む時間になったりすることはありますね。ここでまずアルコールと薬一般の問題を先に説明しましょう。アルコールは体の循環を良くしますので、一般にお酒を飲んだ時には薬の作用は速く、強く現れます。ですからアルコールを控える様に注意の付いている薬もあります。例えば大脳の機能を抑制する作用のある鎮痛剤、睡眠導入剤、精神安定剤などと一緒に飲むとアルコール自身の持つ大脳機能抑制作用と相まって薬の効果が強く出ることがありますし、アルコールの効き目も強く出ます。ですからいつもより酔っぱらってしまいます。逆にけいれん止めの場合、その効果を弱めると言われており、お酒を飲み過ぎるとけいれ止めの効果が減弱し、けいれんが起きることもあります。ですから薬を飲むときにはアルコールは飲まない方が望ましいのです。さて、降圧剤ではどうでしょうか。アルコールは末梢血管を拡張させ血圧を下げる作用があります。アルコールが効いているときは血圧が普段より下がっているということです。(だからと言ってアルコールを多飲すると高血圧になるのですよ。誤解のないように)ですから、降圧剤の効果が強く現れて、低血圧になることがあります。例えば降圧剤を内服している方がビールを腹一杯飲んでトイレに駆け込み勢い良くおしっこをすると、降圧剤の作用とアルコールの作用と急な放尿による自律神経の影響で起立性低血圧を起こし、バタンと倒れてしまうことがあります。やっぱり降圧剤とアルコールは近い時間に飲まない方が良いでしょう。アルコールは普通は夜しか飲まないので、降圧剤を朝や昼に飲むようにすると良いと思います。この答えを読んで気になる方はご相談下さい。少量の晩酌はストレス発散の為に控える必要はないと思います。  
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(Q5)最近は成人病が話題になっていますが、女性には貧血や低血圧で悩む人が多いように思います。私もその一人ですが、血圧を上げる事は出来なくても、少しでもふらつかない元気の出る方法や食品などありましたら、教えて下さい。  K.K

(A5)低血圧は高血圧と違い、病的意義が少ないので明らかな定義がありません。慣例的に上の血圧が一00mmHg以下を低血圧とする場合が多いようです。低血圧の原因には、体質的な場合(本態性低血圧)と何かの病気に伴って起こる場合(症候性低血圧)があります。症候性低血圧をおこす病気には、心臓や肺の病気、内分泌性疾患あるいは自律神経疾患などがあり、おおもとの病気を発見し治すことが低血圧の治療につながります。さて、多くの場合は本態性であり、症状の無い時には治療の必要はありません。高血圧の方より長生きできるのですから、自信を持って下さい。低血圧によると思われる症状(立ちくらみなど)があれば治療が必要ですが、食事療法もこれといって明確なものはありません。ただ、高蛋白食、高エネルギー食が望ましく、水分や塩分は充分にとるとされています。しかし他の病気があれば、低血圧に対しては無理に食事療法をする必要は有りません。
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(Q6)高血圧の薬は飲み始めたら一生飲まなければならないと人が云いますが本当でしょうか?
 
(A6)高血圧症は大きく分けると本態性と二次性に分けられます。本態性と言うのは遺伝的要素が強く、年齢と共に徐々に上昇してくるものです。二次性というものは何らかの病気に伴って血圧が上がる場合で、いろんな病気がありますが、比較的身近な問題にストレス、塩分やアルコールのとり過ぎなどの食事の問題、それに肥満があります。お年の方から外来などで「以前仕事をしていた時には高血圧で薬を飲んでいたのですが、今は下がっています。薬を飲まなくて良いのでしょうか」と聞かれる事があります。これは仕事のストレスやアルコールの飲み過ぎなどが高血圧症の原因となっていた訳で、退職し悠々自適の生活になると血圧が安定してしまうのです。禁酒したり、ダイエットしたりすると血圧が下がることも良く知られています。すなわち二次性高血圧症の場合、その原因が治るものであれば高血圧の薬は要らなくなります。そういう訳で「血圧の薬は一生飲まなければならない」は誤りです。ただし、本態性高血圧症の方はなかなか薬を止められません。それでも体重を減らしたり、塩分を減らしたり、運動を毎日することで薬の量を減らしたり、一時的に中止する事は出来ますので、現在高血圧の薬を内服中の方は普段の節制を怠らないようにしましょう。
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(Q7)高血圧の人はアルコールを飲んでよいでしょうか?

(A7)高血圧の原因の一つにアルコールの飲み過ぎがあります。これはアルコール自体の作用と、つまみに含まれる塩分の関係があります。ですから高血圧の治療には節酒を勧めますが、アルコールを控えることで、まったく飲まないと言う事ではありません。だいたい飲んでよい目安は、一日に清酒なら一合、焼酎ならお湯割りで一合、ビールなら大瓶一本です。昔からお酒は百薬の長と言われ、健康には良いとされていますが、少量の場合です。養命酒にもお酒が入っています。アルコールは血管拡張作用がありますので、血の流れを良くするのです。アルコールは飲み方次第では、身体に良くもなるし、悪くもなります。これからビールのおいしい季節になります。飲まれる方は、ご注意下さい。
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